米国消費者の購買意欲に変化

2025年11月7日

【経済の動き】

FRBも雇用の減少を危惧

10月29日にFRBは連邦公開市場委員会(FOMC)の定例会合で政策金利を0.25%引き下げることを決定しました。軟化する労働市場を考慮してのことです。また、景気後退の予防策として、市場に出回るお金の流動性を確保する為に、12月1日から量的引き締めを中止することにしました。これまで、FRBはインフレを抑制するため、市場に出回りすぎたお金を回収する方法として、保有する国債などの債権を売却し、FRBがお金を受け取り、市場からお金を回収していましたが、今後は売却を中止することによって引き締めを止めることにしました。コロナ期には国債など、債権を大量に購入して、資金を市場に供給しました。それがインフレの一つの原因となったわけです。
この金融引き締め停止は国債の利回りを低下させるのに役立ちます。

消費が減少

これまで、インフレにも拘わらず、米国の消費は堅調と言われてきました。しかし、ここにきて、いくつもの企業業績の悪化が明らかになってきました。例えば、食品大手のクラフト・ハインツ(冷凍食品やバター、チーズ、缶詰など)が通期の売上高見通しを下方修正しました。原因は物価上昇が影響となっています。コーヒー、オーガニック商品、冷凍スナック、調味料の販売が減しています。消費者は嗜好品の購入が減って、必需品の購入に集中しているという分析です。スターバックスも苦戦しています。対策として、売り上げの上がらない店舗を閉鎖し、より多くの客を呼び込むために居心地のいい、サービスのいい店舗を増やすこととしていますが、ポイントはこれまで価格を気にせずフラプチーノなどを飲んでいた消費者が値段を気にし始めたという事なのではないでしょうか? Iced Caffe Latteは$6.25、Iced white chocolate Mochaは$7.45です。 この価格では安めの昼ご飯が食べられます。中低所得者が、価格を気にして、消費を控え始めたことが原因だと思われます。お金持ちの多い南カリフォルニアやニューヨークでは業績が回復と言っています。しかし、高所得者層が多い地域以外は苦戦しそうです。一般庶民は消費を控える傾向が顕著になってきています。

若年層の失業が増加

さらに、若者に人気の外食チェーン店、チポレ・メキシカングリル、シェイクシャックは業績悪化の原因を若年層顧客が減っていることをその理由に挙げています。確かに、若年層の失業率は8月に10.5%になっています。(全米平均失業率4.3%) 
実際のところ、アメリカ経済は良くないと言っていいと思います。儲かっている筈のハイテク企業で大量のレイオフがでています。 オープンAIは赤字経営だし、オラクルは有利子負債が1000億ドルを超えているのです。これは株価高騰と矛盾しています。米国でさえ、配管工や水道工エンジニア養成職業訓練学校への入学が40%も増えているのです。

州によって雇用環境が違う

雇用環境は悪化しているとは言うものの、州によっては求人需要が高く、仕事を見つけやすいところもあります。ニューイングランド、アッパー・ミッドウェスト、グレートプレーンズに雇用環境の良い州が集中していることが分かっています。テキサス州が唯一の南部の州となっています。マサチューセッツ州のテクノロジー産業からダコタ州の農業まで、地域や産業の違いはあるものの、これらの州には共通の強みがあります。それは、低い失業率、堅調な雇用成長、そしてビジネスに優しい環境です。

以下、雇用市場の良い州ベスト10です。

  1. Massachusetts
  2. Connecticut
  3. Minnesota
  4. Vermont
  5. New Hampshire
  6. South Dakota 
  7. Texas 
  8. North Dakota 
  9. Maine
  10. Rhode Island

(出典:WalletHub / https://wallethub.com/

【不動産・住宅ローン金利動向】

不動産売買件数が上昇

不動産売買件数が若干増えてきました。その理由は明らかに住宅ローン金利が下ってきたことと、新築物件の値引き販売が影響しているでしょう。しかし、このまま不動産市場がパンデミック前の状態に戻るかと言えば、そう簡単には行かないでしょう。その理由は、3つあります。まず、住宅ローン金利が当時と比べてもまだ、2%以上高いこと、インフレによって、住宅価格が全米平均で約50%高くなっていること、さらに、一度、職を失うと再就職が難しく、いつ解雇されるかもわからない現状では住宅購入に不安を持っている人が多くいることです。

住宅価格の下落

10月28日に発表された最新のS&Pケース・シラー指数によると、8月の一戸建て住宅価格は前年比1.5%の上昇、7月の1.7%上昇から減速しており、2023年以来の最低の伸び率となりました。
調査対象の全米20大都市圏のうち、価格が下落しているのは以下の9都市でいずれも南部と西部でした。

  1. Tampa, FL     -3.31%
  2. Pheonix, AZ    -1.6%
  3. Miami, FL     -1.66%
  4. San Francisco, CA -1.54%
  5. Dallas, TX     -0.72%
  6. Denver, CO    -0.72%
  7. San Diego, CA   -0.66%
  8. Seattle, WA    -0.09%
  9. Los Angeles, CA  -0.01%

逆に値上がりしている都市は値上がり率の高い順にNew York, Chicago, Cleveland, Boston, Detroit, Minneapolis, Charlotte となっています。New Yorkは6.1%の値上がりでCharlotteでも1.59%の値上がりですから、全米平均すると、値下がりをカバーして全体では値上がりしているように見えます。
(出典:Irish Star / https://www.irishstar.com/

収入がインフレに追い付かづ、毎月の住居費が高すぎて購入できない人たちが増えているうえに、将来の不安があるので、これが解消されるまでは売買件数は大きく増えず、住宅価格は下がる傾向が続くと考えられます。
そのため、不動産市場は買い手市場=値引き交渉ができる状況が続くでしょう。

住宅ローン金利

住宅ローン金利はFRBの金融政策、国際情勢や経済情勢、株価、関税交渉の進捗などの要因に影響されて変動する長期金利と連動しています。その長期金利は10年国債の利回りと連動して動きます。ですから、その動き方は単純ではありませんが、諸条件を考慮すると紆余曲折はあるにせよ、下落方向に向かってると言えます。その理由として、まず、中低所得層の収入がインフレ率に追い付いていないので、消費が抑制的になっています。それは企業業績を悪化させ、希望退職や解雇を増やすでしょう。    
結果、消費者の購買意欲が下がり、インフレ率の上昇を抑制するので、国債の利回りが下がります。それは長期金利の下落につながり住宅ローン金利が下る方法に動いて行きます。今週は若干金利が上がりましたが、引き続き金利の下落は続いて行くでしょう。

【国際ニュース】

ドル基軸通貨体制は崩壊するのか?

ドルの基軸通貨としての地位が危ないと言われています。評論家、エコノミスト、Youtubeなどでいろんな説明がされています。ドル基軸が崩壊するので、ドル安になり、金が買われていると言われています。今年に入ってドル安が続き、金価格が急激に上昇しましたが、2週間ぐらい前から金価格が下落し始め、ドルが上昇し始めました。これは恐らく米中貿易交渉で1年間の関税猶予、中国から米国向けのレアアースの輸出再開、FRBの利下げなどによる影響だと思われます。実際にはブリックス諸国を中心とした国の中央銀行が金を大量に購入しているで、金価格が上昇しているのでしょう。当初は、米国のドル覇権にブリックス諸国が対抗するため、ブリックスの共通決済システム構築の為の裏付けとしての金の備蓄を進めており、その動きがドル基軸体制を崩壊させるのではないか?と思いました。

ステイブル・コインの導入

しかし、そうではなくて、金価格の高騰は米国経済への不安が原因の一つでしょうが、それと共に、世界各国のステイブル・コイン発行の準備ではないかと考えています。実際、まだ先のことだと思っていましたが、日本円に連動する世界初のステイブル・コイン(JPYC)が10月27日に発効されました。円に交換可能で国内貯蓄と日本国債に裏付けされたステイブル・コインです。中国も人民元に裏付けされたステイブル・コインの使用を検討し、韓国もウォン建てステイブル・コインの導入を近く求めるようです。キルギスでは既に導入しています。EUも欧州中央銀行が導入を決めているようです。国際決済銀行によると、既に米ドルに裏付けされたステイブル・コインが市場の99%を占めているそうす。ステイブル・コインは銀行を通さずに国際送金、決済ができる上、国債を発行しなくてもお金を市場に出せるので、今後は各国が競って導入すると思います。

それでもドルは必要

国際決済通貨として機能するのはドル、ユーロ、ポンド、円、人民元です。それ以外の通貨は国際的に信用を得ることが難しいので、裏付けとしては、ドルや金が必要でしょう。実は、産油国と米国の間では原油の売買はドル決済で、との取り決めがあり、今後も石油の需要はなくならないので、基本的なドル需要もなくならないでしょう。また。AIやハイテク産業で世界をリードしているのは米国企業ですし、巨大な米国市場でビジネスをするのであれば、はやりドルが必要です。各国のドル保有の割合は少なくなるでしょうが、他の通貨がドルにとって代わるという事にはならないでしょう。

【今日の豆知識】

日本人に対する米国ビザ発給件数(2024会計年度)

  • B-1(商用)       198件
  • E-1(貿易・駐在員)  1,565件
  • E-2(投資・駐在員) 15,521件
  • H-1B(特殊技能)     613件
  • H-2A(季節農業労働者)   63件
  • H-2B(熟練・非熟練労働者)136件
  • L-1(企業内転勤者)  3,267件 
  • O-1(卓越能力者)     434件

(出典:米国務省)

米国在住者用の住宅ローン金利表

Rates are current as of: 11/02/2025
Loan amount subject


Loans up to $806,500

Conforming Loans vs Jumbo Financing

Loan TypeRatePointsJumbo RateJumbo Points
30 YEARS FIXED6.500%0.1256.000%0.500
30 YEARS FIXED5.990%1.3755.750%1.375
15 YEARS FIXED6.125%0.0005.875%0.250
15 YEARS FIXED5.625%1.1255.500%1.750
5/6 ARM6.625%0.5005.750%0.250
5/6 ARM5.875%1.2505.375%1.250

Loans up to $1,209,750

Standard Loans vs FHA Government Financing

Loan TypeRatePointsFHA RateFHA Points
30 YEARS FIXED6.375%0.2506.125%0.375
30 YEARS FIXED5.990%1.1255.750%1.250
15 YEARS FIXED6.625%0.1256.000%0.250
15 YEARS FIXED5.875%1.1255.250%1.500
5/6 ARM6.375%1.5006.625%0.625
5/6 ARM5.500%2.5005.750%1.125

外国人用ローン金利

※ 2025年11月2日現在の金利

頭金金利
50%以上6.375%
45%6.500%
40%6.625%
35%6.750%
30%7.375%

【ローン条件】

  • 3年のPrepayment Penalty
  • 固定資産税、火災保険はローンと一緒に支払う
  • 30年固定型、5年固定型、7年固定型の3つのプログラムから選択。金利は同じ
  • 投資物件用のプログラム(DSCR)

Remark: このプログラムは米国在住者も使えます。